ろう材について
ろう材の選び方
接合する母材によって、適するろう材は異なります。
母材となる各種金属に対し、どのろう材を使用するかを見極める必要があります。
ろうを選ぶ際に必要な特性としては、以下のようなものが挙げられます。
■融点
ろう付作業において極めて重要な選択項目です。
ろうの種類によってかなり違いがあるので、母材への熱影響、加熱条件、作業方法などを考慮して選定します。
■溶融温度範囲
ろう材によって異なるので、加熱条件、作業方法に見合った温度範囲のものを選ぶ必要があります。
■流動性
作業面から見て大事な特性です。
ぬれ性、ひろがり性と関連がありますが、ろうの種類のほか、母材の種類、表面状況、ろう付温度、継手の形状(特にろう付すきま)などに関係します。
■強さ
ろう付継手の特性として重要な項目ですが、ろうのみでなく、継手の形状、ろう付条件、使用環境などによっても左右されます。
■蒸気圧
作業の方法と、使用条件、環境に関連する特性です。
例えば銀ろうの成分としてのカドミウム、亜鉛などは蒸発しやすいので、真空ろう付作業や電子管、真空機器などへのろう付の場合にはこの特性を重視する必要があります。
■耐食性
ろう付継手の腐食はろう単体というより、母材との組み合わせや使用環境など、腐食性物質との共存条件において起こる可能性が多くあります。
そのためろう材選定のほかに腐食の原因をなくすよう注意する必要があります。
■色調
主に装飾品のろう付の場合に考慮すべき特性です。
母材の色調と対比して選定されます。
■経済性
銀ろうの場合、主成分として銀量の少ないろうを選定する方が経済的なように見えますが、作業条件やろう付特性などを考慮すると必ずしもそうとはいえません。
例えば銀量の多いものの方が継手すきまが狭くて良いというデータもあり、総合的な見方で経済性を評価する必要があります。
いくつかのろうの種類と、適した母材の組み合わせ
母材の組み合わせに適したろう
ろうの種類と融点、ろう付温度範囲
ろうの種類と推奨される適正すきま
銀ろう
銅および銅合金ろう、りん銅ろう
ニッケルろう
金ろう
※出典「ろうの選び方・使い方」(社)日本溶接協会 貴金属ろう部会